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← 詳細はこちら●取得者側の所得税制と平成18年税制改正
新株予約権をストックオプションとして取得した場合の個人である取得者側の課税関係について、平成18年税制改正の変更点
下記にて説明します。
１．ストックオプションの商法から会社法への考え方の変遷
平成１８年５月１日会社法施行前の旧商法の下では、ストックオプションは報酬とは異なるインセンティブ、すなわち、将来株価が値上がりすれば利益が得られるという付加的な財産上の利益の供与であると考えるのが一般的でした。このため、新株予約権は、通常、無償で発行され、対価の認識をしないことから、有利発行手続を要するという考え方がとられていました。
会社法（平成１８年５月１日施行）では、ストックオプション会計基準が会社法施行と同時に施行されたことから、同基準の考え方に足並みを揃え、ストックオプションとしての新株予約権の付与は、「職務執行の対価」として認識するように整理されました。
（出典：『Ｔ&Ａmaster』2006年5月1日号No.161 4〜5ページ「ストックオプション議案等において会社法が求めるもの」法務省民事局付 細川充 前法務省民事局付 郡谷大輔）
２．ストックオプション取得者における所得税課税の考え方の変遷
上記、商法から会社法へのストックオプションの考え方の変遷に伴い、ストックオプション取得者の所得税課税の考え方も平成１８年度税制改正により変わりました。
（１）改正前の所得税課税の考え方
ストックオプションを取得した場合の所得税の考え方は、旧所得税法施行令第８４条3号は、商法の決議（旧商法280の21�／軍�予約権の有利発行の決議）に基づき発行されたストックオプションは、権利行使時にその株式時価と権利行使価額との差額（本源的価値）に課税すると規定していました。
（２）改正による所得税課税の考え方
会社法による新株予約権の規定が新たに追加されました。これは、ストックオプション会計基準の適用に端を発したものであり、旧商法下における新株予約権の制度と比べて、その付与方法が多様化しています。例えば、役務にかかる債権（報酬債権等）をもって金銭払込に代えて新株予約権を発行するような場合では、その新株予約権につき金銭等の払込がない場合であっても会社法上特に有利は条件に該当しないケースもあり、従来のように新株予約権の無償発行が必ずしも有利発行にならないことになりました。これを踏まえ、会社法上の新株予約権は、その新株予約権を引受ける者に特に有利な条件や金額であるもの、または役務の提供その他の行為による対価とされるものに限定されました。これに応じて所得税法施行令ではこれらを追加的に規定しています（所令84四）。
また、この所得税法施行令第84条は、新株予約権の取得に係る経済的利益の課税時期については、「権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているもの」として、従来からある譲渡禁止のものについては、付与時にはその経済的利益が未実現であるから、所得税36条2項の付与時課税の適用はなく、権利行使時課税であることを、新たに明示的に規定しました。
さらに、会社法上、株主に対して新たに払い込みをさせないで新株予約権の割当をすることができる新株予約権無償割当て制度が創設されました（会社法277）。この新株予約権無償割当ては、株主の有する株主の数に応じて新株予約権が割当てられることとされていますが、株主の権利の行使によりその有する株式と異なる種類の株式を割当てることも可能であり、その場合にはその割当てを受けた株主以外の株主に、損害を及ぼすおそれが生じることになります。そこで、経済的利益の額が生じないこととされる「株式等を取得する権利を株主等として与えられた場合」の内容の明確化が図られています。
（出典：ファイナンス別冊 平成18年度税制改正の解説 財団法人大蔵財務協会 平成18年7月3日初版発行152ページ）
平成18年税制改正による所得税法施行令第84条一号から五号の概要は下記のとおり。
（一号）
平成13年11月商法改正以前の自己株方式によるストックオプションの取得価額を規定しています。
（二号）
平成13年11月商法改正以前の新株引受権方式によるストックオプションの取得価額を規定しています。
（三号）
平成18年会社法制定前の旧商法によるストックオプションの取得価額を規定しています。
（四号）
会社法の決議により発行するストックオプションの取得価額を規定しています。
（五号）
一号から四号に掲げるものを除く、株式と引換えに払込むべき額が有利な金額である場合におけるその株式を取得する権利の取得価額を規定しています。
このようにこの規定は、上記に述べた趣旨を踏まえて、譲渡禁止等であるストックオプションについて、その経済的利益の課税時期は、各号に掲げるものについては、所得税法36条2項による権利行使時課税ではなく、権利行使時課税であること。また、それらの取得価額は各号のとおりであること等について規定しています。
