2006年05月23日

ストックオプション会計基準

企業会計基準委員会は、2005年12月20日に企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」を承認し、同年12月27日に公表しました。

新会社法の施行日である2006年5月1日以後に付与されるストックオプション、自社株式オプションおよび交付される自社の株式が適用対象となりました。

ストックオプションを報酬と認識し費用計上するこの考え方は、利益の減少と株価や企業価値の低下を招くことが懸念され、強い反発が生まれたのは周知の事実です。
ストックオプションの費用計上は、ストックオプションが報酬として付与され、対価性が認められる限り、これに対応して取得したサービスの消費を費用として認識すべきとすることが論拠として考えられています。ストックオプションの費用化が決定することで、ストックオプションの発行を見直すことを表明した企業は、2005年11月の時点で40%強(日本経済新聞社調べ)にものぼっていましたが、ストックオプションを発行するベンチャー企業や成長性の高い企業は未だに多いのが現状で、減少傾向にないようです。
ちなみにこのストックオプション費用は、税制非適格ストックオプションに関してのみ損金算入できます。(法人税法54条)

税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションを活用することで、発行企業は自社の目標に応じた制度を設計することができます。

一般に税制非適格ストックオプションは、上場準備会社のオーナーが自己の持株比率維持を目的に利用するケースが多いと考えられています。

税制適格ストックオプション

税制適格ストックオプションとは、権利行使時に権利行使者が持つことになる自社株の含み益(権利行使価額と権利行使時の自社株の時価の差額)に対する課税を取得した株式売却時点まで繰り延べるという付与者における税務上のメリットを設けたストックオプションのことです。ただしその付与においては様々な要件が設けられています。

※税制適格ストックオプションに設けられた要件の一部
付与対象者が、付与決議のあった会社の取締役または使用人であるか、または、付与決議のあった会社が発行済株式総数(議決権のある株式に限る)の50%を超える株式を直接または間接に保有する子会社等の取締役または使用人である個人であること。(一定の大口株主を除く)

新株予約権の権利行使は、当該新株予約権若しくは新株引受権又は株式譲渡請求権に係わる付与決議の日後二年を経過した日から当該付与決議の日後十年を経過する日までの間に行われなければならないこと。

権利行使価額の年間合計額が、千二百万円を超えないこと。

新株予約権の譲渡禁止条項が付加されていること。

しかしこれらの制限は、インセンティブプランとしての機能を著しく損なうものではなく、実際にはその本質的なメリットを享受する価値の方が大きいことから、現在のストックオプション発行事例においてはほとんどが税制適格ストックオプションを採用しております。

ストックオプションの問題点

・権利行使時の資金負担
・業績の向上と株価の上昇が連動しないケース
・上級職層の株式売却難

1.権利行使時の資金負担
ストックオプションを権利行使する際、株式取得のための資金が必要となります。その際、行使株数が多い場合や値の高い株式の場合は、かなりの資金負担が生じてしまいます。

2.業績の向上と株価の上昇が連動しないケース
安定株主の占める割合が高い場合や、株式市場全体が下落傾向にある場合などは、企業の業績が上がったにもかかわらず株価があまり上昇しないことも考えられます。

3.上級職層の株式売却難
トップマネジメント層は、自社株を売却しにくいという問題点もあります。株式を売却することにより、インサイダー取引と見なされるおそれや、投資家心理に大きなネガティブイメージを与えてしまうことが考えられます。

ストックオプションの機能

ストックオプションとは、役員および従業員に「報酬」として付与する「自社の株式を取得する権利」をいいます。

商法におけるストックオプションでは、1997年6月1日より「自己株式方式」が、同じく10月1日より新株引受権(ワラント)方式が解禁となりました。
ベンチャー企業の場合は既存株主の権利の希薄化よりも企業の資金負担の問題が重視され、新株引受権方式が多く採用されたケースもありましたが、大企業では既存株主の権利の希薄化や持分比率の変動を嫌う場合に自己株式方式を導入する場合もありました。(双方の併用は認められていませんでした。その後の金庫株解禁に伴う新株予約権の導入以後は、双方の併用が認められています。)
その後、ストックオプション関連規定を整理統合した商法改正が2001年に成立し、新株予約権規定が導入されました。当時ストックオプションは、会社からの資金流出が無い報酬制度として、広く普及しました。