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2008年09月10日

●無議決権配当優先株式の評価−その1

少数株主の所有する株式は配当還元方式にて評価するものとされますが、無議決権 で優先配当とされた種類株式の評価の場合に、「社債類似株式」として利付公社債等 に準じて評価される場合があると聞いていますが本当でしょうか。

下記にて説明します。

少数株主の所有する株式については配当還元方式が優先して適用され、社債類似株式としての取扱いが適用されることは原則としてないと考えられます。

■理由
ご質問の取扱いは、一定の要件を満たす種類株式を「社債類似株式」として発行価額で評価するというものです。
社債類似株式に関する取扱いは、国税庁による文書回答事例「相続等により取得した種類株式の評価について」の中で明らかにされているものであり、その中で「同族株主 (いわゆる原則的評価方式が適用される同族株主等をいう。以下同じ。) が取得した場合」という条件が明記されております。このことから、該当する取扱いは、本来であれば原則的評価方式が適用される場合を前提にしたものであり、少数株主の保有する株式について配当還元方式の適用を妨げるものではないと解することができます。

■留意点
ご留意いただきたい事項が三点ございます。
第一に、上記の取扱いは「財産評価基本通達」に基づく株式評価がなされる場合、具体的には相続税・贈与税の課税価格の計算や、同族会社におけるオーナー株主間の株式移動などを想定したものであり、独立した第三者間の取引価格の算定にまで適用されるとは考えられないということです。
第二に、社債類似株式に関する取扱いは、「財産評価基本通達」の中で明文化されたものではなく、現段階では文書回答事例という形式で周知されているということです。種類株式の評価に関する財産評価基本通達上の取扱いについては、現在検討が進められている段階といわれます。したがいまして、今後種類株式の評価方式に関する新しい取扱いが示されれば、上記の結論が変わる可能性はございます。
第三に、配当還元方式により評価した金額が原則的評価方式により評価した金額を超える場合、原則的評価方式により評価するという点です(財産評価基本通達188-2)。したがいまして、社債類似株式の以下の要件を満たす場合には、双方の結果を比較した上で低い方を選択するという必要性が生じます。

・累積型非参加型の優先配当条項があること。
・残余財産の分配は発行価額を上限とすること。
・一定期日における取得条項が付されていること。
・議決権を有しないこと。
・他の種類株式への転換請求権がないこと。

以上の要件を満たした上で、資本金等に対する配当金の割合が10%超であれば、社債類似株式として評価する方が配当還元方式よりも有利となる場合があります。


※注
上記は相続等により取得した種類株式の評価を前提にした考え方ですが、所得税、法人税の種類株式評価では、異なる取扱いとなる可能性があります。
また本内容の作成者は、本内容の見解と課税当局との見解が相違したとしてもその責任は負いかねますのでご了承のほどお願いいたします。